Greeting

進藤勝之
 

『お客様に寄り添った設計者でありたいと思っています』

 建築にあこがれてこの世界に入り、今まで色々な仕事を経験するなかで「家」や「暮らし」に関わる仕事をしていきたいと思うようになりました。家づくりはとても夢のある楽しいものです。でも難しい。私自身子供を持つ親であり、親を持つ息子でもありますが、自分の家のことを考えたときに様々な選択肢があり、プロである私でも悩むことがあります。そういう大切な家づくりのことを考えたとき、相談相手というか話し相手というか、お客様自身の気持ちや選択をサポートし、納得できる楽しい家づくりにしていけるよう、お客様に寄り添った設計者でありたいと思っています。 
 事務所の名前「セッテン」とは「接点」という意味です。人とヒト・人とモノ・人とコトの接点をいろんなかたちで創っていければとの思いから名付けました。 

進藤勝之サイン

はじめに − 改修を通じて −
 
 事務所開設をして2年目の2009年、建築士会報『建築人』の「これからの住まいのかたち」という特集に寄稿させて頂いたものです。「改修」の設計監理にとりくむ中での気づきや想いを書かせていただきました。少し長いですがお読みいただけると幸いです。
 
 
「フローからストックへ」を「実感」する世代
 
 1966年に制定された「住宅建設計画法」に基づいて、量と最低限の質を確保することを目的に住宅が供給されてきました。そして私たちを取り巻く社会の変化に伴い、2006年「住生活基本法」が制定され、住宅の供給政策は「フローからストックへ」と大きく舵を切ることになりました。 実はこの時間的流れは、筆者の生い立ちとまさに合致していて、同時に住宅を取り巻く環境における「変化」を自らの体験をもって思い起こすことができました。つまり、大工の建てた民家から文化住宅、建売やハウスメーカー住宅、団地、マンションまで、現代の住環境のめまぐるしい変化を、身をもって体験し、その体験を通した変化を「建築に携わる者」として振り返った時、住宅を通じ生み出される新しい可能性に気付き、取り組んでいけるのではないのかと考えました。そして私と同じ世代は自らの体験をもとに「フローからストックへ」の変化を「実感」でき、「改修」に取り組むのにふさわしい世代ではないかと感じます。
 
 
「改修」がもつ問題点
 
 2003年当時、悪徳リフォーム事件が多数紙面を賑わせており、消費者にとって「改修」そのものが大きな不安要素となっていました。「何をもって安心を担保すればよいのか」という隠れた消費者心理が存在し、安心を担保するのは「大手住宅リフォーム会社」しかないという消費者が圧倒的多数を占めることになっていました。改修を誰に頼むのかという選択をする時に、「大手というブランド」と「何らかの不都合があった時の為の資本」が「安心を得るための条件」となっていました。そして大手がそれに応えるために改修の抱える問題点について「商品開発」という名の相当の努力をしていることを目の当たりにして私は大変ショックを受けました。このことが「大手」を「改修」の選択肢にしていた要因であるし、当時「大改造!!劇的ビフォー&アフター」という番組で「建築家=匠」と取り組む「改修の多様性」を取り上げブームになっていたにも関わらず「匠の改修」を大手に託そうとする消費者が多かった事に、設計事務所や工務店を含めた小規模な会社が、消費者にとって安心を担保する選択肢になりえていないという問題も明らかにしていました。しかし、そういった状況の中でも大手の手がける改修には確実に「少しの我慢」が存在していました。
 その我慢とは「質」の問題です。ここで私が言いたい「質」とは、既存との相性や適性を考えた材料や工法の選択肢が限定されているという問題、建材の規格寸法から決まるプランの問題、「既存」という膨大な情報を整理し決定していく上でのコミュニケーションのとり方とその時間の無さの問題です。
 私はこの「質」の問題に様々な観点から取り組む事によって、「ブランド」と「資本」に対抗することなく、互いに補完し合いながら、住まい手の安心と満足を確保し「ストックを活用する」為の多様性を受け入れるとともに、可能性を広げる事ができるのではないかと思います。
 
 
「改修」が開く可能性
 
 ではなぜその相当数の住まい手は、我慢をしながらも「改修」する動機を持ち、自分たちの住まいについて「改修」を選択することになったのでしょうか。 それは、都市部において問題点となる「法律」と、人間の根源的な感覚である「愛着」この二つが大きな要因であると私は考えています。
 「法律」の問題は、いわゆる「新築できない」であるとか「新築すると小さくなる」という理由が圧倒的に多く、簡単にいえば「新築できない」は、悪質な開発や無計画な分筆により接道していない土地を生んだ結果です。「新築すると小さくなる」とは現状の土地に対する道路後退線や建ペイ率の問題です。どちらも負の要素が強い動機ですが、これらの理由を軸にストック活用が進んでいることは何とも皮肉なことです。
 次に「愛着」の問題です。一つは「家そのものへの愛着」、そしてもう一つは「地域への愛着」です。
 近代以降私たちは住宅について様々なものを数値化して表わそうとしてきました。必要のないものまで数値化してきた結果、住宅の性能や品質は数字で表わすことのできるものだけが顕在化し、それ以外のものは見過ごされてきたように思います。特に新築というカテゴリーにおいてその傾向は強く、住環境を創造するという意味では同じ「改修」を計る価値観までもが、この新築を基準に行われているのが現状ではないでしょうか。
 
 
 
新しいイコールパートナーシップの構築
 
 改めて感じるのは「改修」は簡単ではないという事です。新築とは違い現実に存在する「既存」を様々な観点から読み取らなければなりません。前段でも触れたとおり、私は「改修」にこそ、より多くの建築家の参入の必要性を感じます。改修に取り組むうえでは机上の計画のみでは実現は不可能です。では、その不可能を可能にするために何が必要なのでしょうか。
 それは、既存に向き合い「考える力」を発揮する建築家と、既存に向き合い「つくる力」を発揮する施工者という新しいイコールパートナーシップではないかと考えています。誤解を恐れずに例えるならば、表層のデザイン論や机上の計画論のみで改修が進められれば、設計と施工の間には「既存」という大きな問題やギャップを前にして、「図面にあるからこうしろ」「図面にあったからこうした」的なクライアント不在の設計施工間の問題が噴出することになるのではないかと思います。それは最終的に「建築家価格」なるコストの問題へと波及し、コストを負担する消費者は「建築家」と取り組む改修を選択しなくなるのではないでしょうか。そうならないためにも、設計と施工の壁を越えたイコールパートナーを構築して、計画ごとにクライアントと共にコミュニケーションをとりながら、最終的にクライアントを含めたイコールパートナーを創りあげた上で「改修」を進めていくことが必要ではないかと考えています。
 
 
クライアント側から見るストック
 
 では「改修」を進めるクライアントはストックをどう見て、どう感じているのでしょうか。
 戸建住宅については既存建物の構造的不安から、また他人が使用したという中古感覚から、改修して移り住むという対象にまだなっておらず、流通商品としての既存戸建住宅の活用が大きく広がるのは難しいのではないかと思われます。その反面、既に所有している既存に対して「この家に住む、この地域に住む」という思いや「家族にとってのかけがえのない家」に対する思いを託して「改修」に取り組むクライアントはとても多いと感じます。マンションについては、工法として安心であるという感覚と、集団で住むという心理的なものが構造面での不安を漠然と和らげているように思います。また長期修繕という共同でメンテナンスをするマンション特有の制度が、安心を担保する形として有効に働いていて、住戸自体もスケルトン−インフィルの概念が広く受け入れられ、「自分らしさ」を取り入れやすい点もあり、移り住む対象としての流通商品として選択肢に入ってくるのではないでしょうか。
 
 
「改修」が産み出す大切なもの
 
 さらに今まで私が経験した「改修」を「建築を通じたコミュニケーション」という点から見てみたいと思います。 改修には必ずその対象となる「既存」があり、改修に着手する時点ですでにクライアントはその既存に対して思いをめぐらせています。設計の段階からクライアント自身が既存から問題点を見つけ出し、いかに自分らしく、そして気持ちよく住むことができるのかについて考えています。要望には単純なものから無理難題なものまでありますが、その中には確実に様々なかたちでの「既存に託した愛着」が存在していることを実感することができます。
 
 こういった出来事は、工業化されたプロセスの住宅の現場からは見ることができなくなった、素晴らしい出来事であり、「改修」を通じて見ることができる本来の「建築ごと」で、今後の住まいのありかたや、クライアント、私達の価値のあり方にとって、とても大切な要素であると私は感じています。
 
 
最後に − 住まいを愛でる心の芽生えへ −
 
 耐震偽装問題を発端に建築士の信用が失墜し、それを国が担保する形で、建築基準法や建築士法が改正されました。そのことについては様々な観点から議論されていますが、私が思う事は、この流れを「改修」というカテゴリーに波及させてはならないという事です。
 そうなる前に私たち専門家は一人一人が自覚をもって「改修」に取り組まなければならないと思います。
 「考える者」「つくる者」という垣根を越え、共通の目的のもとに一所懸命さや真剣さ、プロ意識の中にお互いの理解を深め、信頼関係を築きながら取り組むことによって「改修」を本来の「建築ごと」へ戻していく。そのことで初めてクライアントは建築に携わる者を尊敬し、信頼することができ、そして「改修」に安心して取り組めるのではないでしょうか。
 クライアントは「改修」を通じて生まれた住まいに対する愛着を、親子で分かち合いながら住んでいくことになるでしょう。そして子供たちの中には独自の愛着が湧き、住まいを大切にしていくでしょう。それらは子供たちに「住まいを愛でる」という素晴らしい心を芽生えさせ、住まいへの愛着を通じて得た、家を大切にするという振る舞いとして現われてくるのではないかと思います。
 そして、その芽生えた心や振る舞いが、さらなる住まいへの愛着へと繋がり、親から子へ、子から孫へと思い出と共に住み継がれていく。これらの流れすべてが、根底の部分での建築教育となって30年後50年後に、私達世代の祖父母が教えてくれたような「住まいを大切にするこころ」として残ってくれれば、こんなに素晴らしいことはないし、日本の未来は明るい!と思います。
 最後に、私の考える「これからの住まいのかたち」は、いわゆるスタイルではなく、「改修」あるいは「家づくり」を通じての行為そのものであり、それを通じて生まれる住まいへの愛着だと思います。
 そして、その住まいへの愛着は将来、多様で深みのある「住まいのかたち」を次世代の手によって私達に示してくれるのではないかと考えています。
 
 
kenchikujin No.539 2009.05 『建築人』 文責:進藤勝之
 


一級建築士・管理建築士
日本建築士会連合会 会員
木造住宅耐震診断講習修了者
住宅省エネルギー設計技術者
被災建築物応急危険度判定士
既存住宅現況調査技術資格者
略歴
昭和44年 広島県 生まれ
広島市立矢野中学校 卒業
広島県立海田高等学校 卒業
広島工業大学 工学部建築学科 卒業
仙田満+環境デザイン研究所 研修生
株式会社アイ・エフ建築設計研究所 勤務 所員
株式会社彦谷建築設計事務所 勤務 主任技師
住友不動産株式会社 ハウジング事業本部 勤務 所長
アトリエ・セッテン 一級建築士事務所 設立 代表
大阪工業技術専門学校 非常勤講師(~2016.3)
アトリエセッテン広島事務所 開設(2016.4~)

  住宅情報サイトで紹介されています
「あなたにお願いしたい」という言葉が私のモチベーションです!」housebase press

テレビ『大改造!! 劇的ビフォーアフター』にリフォームの匠として出演しました

物件273『電車サイズの家』
番組史上極細狭小リフォーム2時間SP!
出演:所ジョージ、江口ともみ、加藤みどり
ゲスト:浅田美代子、パンツェッタ・ジローラモ
▼Link
●これまでの放送リスト『電車サイズの家』
●匠紹介『夢生む住まいのコンサルタント』
●ビフォーアフター大賞2015「空間アイデア部門賞」受賞

TV番組『家の教科書 建築のプロはどんな家を建てた!?』に建築のプロとして出演

SE構法を採用した『住宅街の中の別荘』を浅草キッドの水道橋博士と訪問!
出演:浅草キッド水道橋博士
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●TV番組『家の教科書 建築のプロはどんな家を建てた!?』